●続・CHANGE 2●





●○●○● SIDE:HIKARU ●○●○●



「やっちまった……」


としか言いようがない。

変化した自分の体を見て目眩がしそうになった。


ありえない。

ありえない。

ありえない!!

オレが女になるなんて…!!




「大丈夫か?進藤」

ニヤニヤと生理痛の具合を伺ってきた塔矢を睨みつけた。

「笑うな!冗談じゃないぜこんなの!」

「自業自得だ。それにキミは僕にその冗談じゃないことを二回もしたんだよ?身をもって反省してもらおう」

「…嫌だった?」

「当たり前だ」

「…ごめん」

「……」



オレは女になった塔矢に惚れていた。

初恋だった。

中身は男だって分かってるのに、好きな気持ちが抑え切れなくて。

塔矢が出産で苦しむ度に反省するのに、しばらくするとまた女のコイツに会いたくなって………薬を使う。

その繰り返しだった。

塔矢はオレのことが好きだから結局は許してくれるけど…。


でもオレはコイツの男としてのプライドをずたずたに切り裂いた。

そして、棋士としてのプライドも―――


休戦と復帰を繰り返したおかげでなかなか段が上がらない塔矢は、未だに六段だ。

タイトルこそまだないが、挑戦者には何度もなったことのある塔矢が六段だぞ?

あの実力で六段。

ありえない。

それなのにオレだけ一人九段に上り詰めて……本因坊のタイトルまで取って……


「……はぁ。反省…ごめんなさい。もうしません」

「よろしい」


塔矢が生理痛の薬を渡してくれた。

この出血が終わったら速攻子作りしよう。

さっさと産んで、さっさと戻ろう。


…あれ?



「そういえばオマエ…男役でエッチ、したことないんじゃねぇ?」

「…ああ。ない」

「マジ?童貞?」


ププっと笑うと拳でゴツかれた。


「キミだって処女だろう?お相子だ!」

「うお。マジか…。確かにそうだな…。オレ…バージンだ」


速攻子作りとか思ってたくせに、まだ処女だと気付いたら急に怖くなってきた。

しかも相手が童貞の塔矢だなんて……


「い、痛くするなよ!」

「頑張るよ」

「……はぁ」


前途多難………







*********************







身長が170cmちょっとだったオレは、女になってもたいして変わらなかった。

でもやっぱり骨格が変わったから、肩が丸い。

ウエストが細い。

胸は……残念なことになかった。


「くっそ。ブラだけオマエのじゃ合わない…」

「Aなんだろう?別に付けなくていいじゃないか」

「…それもそうか」


同じ女でも、今のオレと女の塔矢は全然違っていた。

塔矢はキレイ系だけどオレは可愛い系って感じ。

成長期が終わってやっと男っぽくなったってのに、これじゃあ逆戻りだ。

この丸い顔…すっげー懐かしい。


「キミは目が大きいから暖色系がよく似合いそうだね。一緒に買いに行こうか」

「お…おう」


通算で3年以上女だった塔矢は、女物のショップにやたら詳しかった。

一応…エスコートしてくれてることになるのかな?

ちょっと頼もしい。


それに、今さらだけど…塔矢ってカッコイイんだよな。

整いすぎた男前の顔に、すれ違う全ての女の視線を感じる。

オレだって男だった時はジャニーズ並の顔立ちで結構見られてた感はあった。

でも、レベルが違うっていうか……ほら!オバサン連中まで見てる!

当然一緒に歩いてる女装姿のオレも見られて…超恥ずかしい……


「…どうした?進藤。疲れた?休憩する?」


徐々に歩くスピードを落とすオレに気付いた塔矢が、振り返って手を差し出してきた。

この手を取っちまうと…中身まで女になりそうで嫌だ。

早く戻りたい……








「…塔矢。オレ生理終わった」

「え?」

「家では子供達がいるからしたくない。ホテル行こうぜ」

「いいけど…」


手を取らずに腕を掴んで、近くのシティホテルに引っ張っていった。

エッチだってオレが上に乗ってやる。

主導権はオレが握る。

オマエの下で喘ぐなんて真っ平!

オレのプライドが許さない。

女なんて体だけだ。

中身は今も男だ!!







*********************






男だった時も男の塔矢とそれなりにシた。

アイツの体は隅々まで知っている。

知り尽くしてる。

なのに、どうしてこんなに緊張してるんだろう…。

どうしてこんなに怖く感じるんだろう――


お互い入れ違いで風呂に入った後――オレと塔矢はベッドで向かいあって固まっていた。

まるで初めて同士が迎えた初エッチみたいに―――



「…子供三人もいるくせに笑えるよな。なんかすげぇ緊張してる…オレ」

「キミの場合は単に怖いのだろう…」

「オマエは?」

「どうしたらいいのか分からなくて…考え中」

「情けねー奴…」

「ごめん…練習しておくべきだった」

「誰と?」

「誰とって……」

「オレ女役は嫌だからな!他の女とするのもダメ!」

「じゃあ…」

「そ。オレとするしかねーの。オマエが童貞を捨てるには、女のオレとするしかねーの!」

「じゃあ…いい?」

「さっさと来い!あっという間に夜になっちまうぞ!」


ようやくオレに覆いかぶさってきた塔矢は、ぎこちなく愛撫を始めた。

色んな所にキスをしながら…上から順々に触れていく……

オレが女のオマエにしていたことを思い出しながら進めてるんだろう。

気持ちいいかって?

うーん…あんまり。

コイツが下手というよりは、オレの気持ちが乗ってないって感じ。

オレは塔矢にされたいんじゃなくて、したいんだ――



「…ストップ。オレが上になってもいい?」

「あ…うん」


体勢を入れ替えると、やっとすっきりした感じがした。

うん、やっぱりこっちの方がしっくりくる。


「塔矢…」

「し…んど…」


男同士だった時と同じように塔矢の体に触れていった。

肌の気持ち良さやコイツの体と顔のエロさで、徐々に気持ちがその気になってくる。

その証拠に――ほら、オレの下も濡れてきた。

でも……


「…塔矢、ここ…触って」

「う…ん」


塔矢の手を自分の下半身にあてた。

…だって、濡れることは濡れるけど、全然広がってねーんだもん。

処女じゃなかったら入るのかもしれないけど、正真正銘初めてなオレのココは、絶対に塔矢のソレを受け入れることが出来ない。

慣らしてもらわないと……



「――……ん……ぁ…っ」


思わず出た声に、慌てて口を手で塞いだ。


「進藤…可愛い」

「うるさいっ!黙って触れ……ぁ」


…くそっ。

くそ!くそ!くそ…っ

予想以上に気持ちいい…これ。

女があんなに喘ぐ意味が分かった気がする。


「ひゃ…っ」


下を弄りながら胸も舐めてきて、もう頭がどうにかなりそうだった。

さっきまで舐められても全然感じなかったのに……なんでだ??

女の体って謎だ……



「……は……塔…や、もう…いい。挿れろ…」

「うん…」


再び下になったオレは、両足を思いっきり広げられ…ありえないぐらい恥ずかしかった。

童貞の塔矢がこれまたありえないぐらい挿れる場所を確認するから、恥ずかしさに耐え切れず…ベッドサイドの電気を消した。


「見えない…」

「手探りで探せよ」

「この辺…かな」

「ん……そう。あ…ゆっくりな―――いっ…」


痛い…痛っ!

なんだこれ!

死ぬ!

死ぬーーっ!!


「無理!無理っ!オマエこんなのどうやって我慢してたんだよ!」


ありえないぐらいの圧迫感で、力を込めないと我慢出来ない。

あれ?

でもオレ…女には力抜けって言ってたような…??


「進藤…大丈夫か?」

「…駄目。無理。痛すぎ…」

「言っておくけど出産はこんなものじゃないぞ」

「脅すな…よ……はぁ」


ようやく奥までたどり着いて塔矢の動きが止まると…次第に慣れてきて、ギュッと瞑っていた目も開けることが出来た。

少し汗ばんだコイツの顔が視界に入る。


「…どうよ?女の中は…」

「うん…温かくて気持ちいい」

「そ。よかった……でもこれを機に女に走ったら許さねぇから」

「それじゃあ…キミが女性の間に一生分しておくことにするよ」

「妊娠するまでな。子供が出来たら…触ったら殺す」

「僕の時は触ってきたくせに…」

「オレはいいの!上手いから!」

「…ふぅん」


あ…まずい。

ちょっとマジな目になった塔矢が再び動き出した。


「…あ……っ」


痛さの次に襲ってきたのは快感。


「わ…っ、や……っ…あ…ぁ…――」


口を塞いでも塞ぎきれなくて…声が漏れる。

やばいぐらいに気持ちよくて。

なぜか涙まで滲んできて。

次第に何も考えられなくなって頭が真っ白。


「とう…や…」

「進藤……」


塔矢に抱きしめられると、その広い胸に気付いた。

塔矢の胸が大きくなったんじゃない……単にオレが小さくなったんだ。

んなこと分かってるけど……安心する。

……よかった。

塔矢の初めての女がオレでよかった。

もし他の女だったら、絶対に塔矢をそいつに取られてた。

やだ。

男でも、女でも、塔矢はオレのものだ。

一生コイツの横にいるのはこのオレだ――



「は…っ、…ぁ…あ…―」

「進…藤……も…う…」

「ん…いいよ……オレもイけそ……ぁ…」


横になったり、上になったり。

ベッドの上でしばらく転げまわった後――ついにオレらは絶頂を迎えた。

先に塔矢がイって、その後すぐにオレも達した。

女の絶頂も最高……――




「進藤…満足した?」

「ちょっとはな…」

「ちょっと…か。精進するよ…」


本当は…そんなことない。

十分なぐらい満足出来た。

でも、せっかく精進してくれるっていうんだから――黙っておこう。


「…塔矢。オレさ…女もそんなに悪くないって思ってきた」

「だろう?」

「でもずっとはやだな。生理とか化粧とか下着とか色々面倒だし」

「はは…僕も同じだよ。一年限定だからまだ我慢出来た」

「うん…一年あるんだよな。先は長いぜ」

「あっという間だよ。僕が初めて女になってから、何年が経ってると思う?ルキアはもう中学生だよ」


ということは、もう13年…か?

早っ!


その間――塔矢は三回女になった。

あと何回…オレは女の塔矢に会えるんだろう。

会う為には、まずはオレが男に戻らないとな。

でもその前に、せっかくだから女も楽しんでおこう♪



「塔矢、しばらくホテル通いだから覚悟しておけよ」

「ああ…頑張るよ。色んな意味で」






約11ヶ月後――オレは無事に女児を出産する。

その痛さに再び身をもって反省するのだが、忘れた頃にまた塔矢に服用を試みたりするのだった。



まさにエンドレス―――








―END―



ありがとうございました!