●BUSINESS HOTEL 3●


「キミとなら……いいかも」

「え…?」

「いいよ、…しても」


進藤の目が大きく見開いた―。


「塔矢、それって…オレと付き合ってくれるってこと?」

「そこまではまだ考えてない…」

「は?」

「交際のことは一度冷静になってからじっくり考えたい。取りあえず今はこの興奮を冷ますのが先だ」

「いや、普通逆だろ…」

「そうなのか?」

「うん…―」

進藤の顔が僕の顔に近付いて来て――頬にキスされた。

そのまま耳元で囁かれる―。


「塔矢…好きだよ…」

「あ、ありがとう…」

「オレと付き合って欲しいんだ…」

「キミと…?」

「うん…」

「………」


進藤と……付き合う?

それはつまり…彼氏と彼女の関係になるってことだよな…?

ぼ、僕と進藤がか?!

今までライバルだったのに?!

いきなり馴れ合えと?!


「…無理だ」

「え?」

「キミと僕はライバルだ。馴れ合いながらいい碁が打てるものか」

「打てるって!恋人どころか、夫婦同士が棋士ってのも別に珍しくないじゃん!」

「ふ、夫婦?!」

「あ、いや…、オレはまだそこまで考えてねぇけど…」

顔を真っ赤にして訂正してくる。


「じゃあ…僕とはただの遊びのつもりなのか?」

「は?」

「飽きたら別れるつもりなんだ…」

「ええ?!んなわけねーじゃん!今は考えてないってだけで、いずれは…と思ってるし。ていうかまだ付き合ってもないから…考えても虚しくなるだけだし…」

「僕は中途半端な交際はしたくない。付き合うなら『結婚を前提』が第一条件だ」

「…マジ?」

「マジ、だよ。僕には余計な恋愛ごとに時間を割いてる暇はないからね」

「……」


進藤が視線を上に向けて、少し考える素振りを見せてきた。

だけどそれは一瞬だけ。

すぐに視線を僕に戻した彼は、僕の体を起こして――真面目な顔でそれを口にしてきた―。


「…じゃ、塔矢。結婚前提でオレと付き合って下さい」

「……本気?」

「何だよ!中途半端な付き合いはしたくないって言ったのはオマエの方じゃん!」

「だって芦原さんが…」

「は?芦原さん?」

進藤が途端に面白くなさそうな顔を向けてくる。


「昔芦原さんが…17、8歳の男の子なんて遊びたい真っ盛りだって…言ってた気がする」

「だから?」

「だ、だから、キミだってそうなんだろう?色んな女の子と付き合って、色々経験もしてみたいと思ってるんだろう?僕はその中の一人になるのは御免だ!」

「……はぁ」


思いっきり溜め息をつかれて、ダメだこりゃ…と言わんばかりに首を振られてしまった。

僕…何か間違ったこと言ったのかな…?


「…あのなぁ。確かに付き合いたいし、経験したいと思ってるよ。でも色んな女の子ってところは余計。オレはオマエと付き合って、オマエと経験したいんだ」

「僕と…だけ?」

「当たり前だろ。でなきゃ結婚前提なんて言葉易々言えるかっ」

「………」


…どうしよう…。

ちょっと……いや、かなり嬉しいかも…。

進藤はこの歳で僕一人に決める覚悟があるんだ。

それくらい本気で考えてくれてるんだ。


すごく嬉しい――



「…うん。じゃあ……いいよ」

「付き合ってくれんの?」

「…うん」

途端に進藤が僕の体をガシッとキツく抱き締めてきた―。


「…やった」

「そんなに嬉しいのか…?」

「当たり前じゃん!ずっと好きだったんだからな!」


更にキツく抱き締められ――そのまま再び体をベッドに押し付けられた。


「……してもいい?」

「いいけど…、隣りに迷惑じゃないか?」

「……確かにな」


お互いさっきの光景を思い出して苦笑いしてしまった。

この壁の薄いビジネスホテルで抱き合うことほど迷惑なことはないよね…。



「んー…じゃあさ、一本向こうの通りにラブホがあるんだけど……移動してもいい?」

「いいよ」




――そうして真夜中だというのにホテルを移動した僕ら。

やっぱり専用のホテルだと……色々都合がいいってことはよく分かった。

ビジネスホテルは名前の通り、やっぱり仕事用に使うべきだと僕らは思う――












―END―












以上、ビジネスホテル話でした〜。
えー…何が言いたかったのかと言いますと、ビジネスホテルでヤるな!ってことです(笑)
有料チャンネルを大音量で観るのもご法度だと思います。ハイ。
だからうちのヒカアキは無駄にシティホテルとラブホを利用します(笑)
でもどちらかというとシティホテル推奨派。
夜景の綺麗な高層階の部屋で、一晩中ラブラブしててほしいものです(笑)