●BOY FRIEND●
――塔矢に彼氏が出来た――
「…いつも二人で何やってんだ?」
「色々だよ。食事に行ったり、ドライブしたり…碁を打つこともある」
「ふーん…」
塔矢の相手はオレらより7つも年上の大人だ。
(つーかオヤジ)
打ち初めのパーティーの時に向こうが一目ぼれしたんだと。
(笑っちまうぜ)
んで金持ちのそいつは裏から手を回して塔矢と上手く接触し、まんまと彼氏の座を手に入れたわけだ。
(卑怯だよなー)
塔矢の方もそいつが意外に結構な打ち手だったから気に入ってるみたい。
でもそいつと塔矢が打った対局を並べてもらったことがあるけど、正直言って大したことなかった。
確かにアマチュアにしては上手い方だと思うが……所詮素人じゃん?
プロのオレらに張り合うには100年早ぇ…。
棋力だったら絶対こいつよりオレの方が塔矢に見合うよな。
オレの方が…―
「はぁ…」
…オレってバカみてぇ。
今こんなにやっかむぐらいならさっさと告っとけばよかった…。
もう少し後でもいいか、なんて何で思ったんだろ…。
こいつが美人で目を魅く存在なのは百も承知だったのに―。
「…もうエッチした?」
「は?」
塔矢が一瞬顔を歪ませて、すぐに赤面しだした―。
「す、するわけないだろっ!」
「ふーん…じゃあキスは?」
「し、進藤っ!ふざけるなっ!」
ふざけてなんかねーよ…。
「1ヶ月近く付き合ってるのにキスもまだなんだ?オマエの彼氏って大人のくせに奥手なんじゃねーの?」
「知らないよそんなことっ」
塔矢が顔をプイッと横に向けた。
「…オマエの方から迫ってみたら?」
「進藤っ!黙れ!キミには関係ないだろっ」
「関係大有りだぜ!」
ガタッと必要以上に煩く音を立てて立ち上がり、対峙していた塔矢に近付いた―。
「進藤…?」
睨んで見下ろしてるオレに少しビクつきながら、茫然と見上げてる。
「…オマエが他の男と触れ合うなんて…想像するだけで虫酸が走る」
「え?あ…ちょっ…―」
「ん…っ、ん―」
塔矢の口に無理やりキスをして、そのまま後ろの壁に押し付けた―。
オレを離そうと拒んでくる手の腕を掴み、頭の横に同じように押し付ける―。
「ん…――」
何度もついばんだ後、少し開いた唇の隙間から舌も忍ばして…口内をくまなく探っていった―。
次第に塔矢も抵抗の力を弛め、オレとのキスに感じるように…舌で返してくれた―。
「…んっ…ん…―」
口の中で絡め合いながら、もうどちらのとも分からない唾液が混じり合って…口の隙間から垂れていく―。
「―ぁ…はぁ…は…ぁ…」
唇を離すと、乱れた呼吸をしながら塔矢はオレの方を見つめてきた―。
「進…藤…」
両腕と体を壁に押し付けたまま、オレの方も見つめ返す―。
「…ずっと好きだったんだ」
「え…」
「誰にも渡したくない…」
「……」
困ったように下を向いてしまったので、頬に優しくキスをして…耳元で囁く―。
「あんな男やめとけよ…。オマエにはオレの方が似合ってるって…」
「…うん、僕もそう思う…。僕はキミが好きだし…」
「……」
あっさり賛同されて、思わずオレは塔矢を引き離してしまった。
「じゃあ何で付き合ったんだよ!」
「興味があったからだ!彼氏というものに!」
「オレが好きなのに?!ならあんな奴の申込を受ける前に、オレに告るべきだろ!」
「そんなこと出来ない!キミも僕を好いてくれてるなんて思いもしなかったし…もし失敗して変な距離が出来てしまったら…打ちづらくなるし…」
だんだん塔矢が瞳に涙を浮かべてきた―。
「あー…悪かった。オレがさっさと告るべきだったんだよな」
「そうだよ」
「うん…じゃあもう彼氏とは別れろよ。んでオレと付き合って」
「うん―」
塔矢が嬉しそうにオレに抱き付いてきたので、オレも抱き締め返し――ついでにもう一度キスをした―。
―END―
以上、彼氏持ちアキラ話でした〜。
短っ!
今回はアキラにヒカル以外の彼氏がいたらどうなるか?!と、書き始めてみましたー。
ヒカルは嫉妬心丸出しです。
例えもし自分にも彼女がいたとしても、アキラのことを女としてみてなくとも、同じ結果だったと思います。なんとなく。
アキラを独占したいのです。
他人になんか渡したくないのですよ。
それを阻止する為なら自分の気持ちをも抑えると思う。
どんな状況でも結局は二人は結ばれる運命なのです!…ということを言いたい。ヒカアキストとして。