●24th BIRTHDAY 2●






「それよりさぁー…」

「なに?」

「オレさっきからずーっと気になってんだけどさぁー…」

「だから何?」

「オマエ、今ノーブラだろ」

「は…っ?!」


慌てて腕を十字にして胸を隠した。


「し、仕方ないだろう!下着も濡れちゃったんだから!」

「ふーん…下も?」

「は?」

「じゃあ、下も穿いてないとか?」


立ち上がって僕の方に移動してきた進藤が、ジャージに手をかけてきた。

「ちょっ、なんのつもりだ!」

もちろん逆方向に引っ張って、必死に抵抗する。


「ジャージ姿のオマエってマジウケるよな〜」

「き、キミが用意したんだろう!」

「嫌なら穿かなきゃいいじゃん。脱げよ」

「は…はぁ??キミいい加減にしないと本当に怒る…」

「やだー怒らないでー」


今度は僕の体に抱き着いてきた。

な、なんなんだ今日の進藤は!

早から酔っ払ったのか?


「オマエ…言ったじゃん。彼女の代わりに祝ってくれるって…」

「そりゃ…言ったけど」

「本気じゃなかったんだな?」

「…本気だけど」

「じゃあいいじゃん!しよ♪」

「……は?」


一気に体重をかけられて、僕はソファーに体を倒されてしまった。

チュ〜ッと首筋にキスされる。


「し、進藤…!やめろ!」

「恋人の誕生日なんだぜ?エッチぐらい当たり前だろ」

「僕はキミの恋人じゃない!」

「でも代わりになるって言った。じゃあ代わりに大人しくヤられとけよな」

「な…っ」


何めちゃくちゃなことを言ってるんだこの男は…!

冗談じゃない…!!




「……塔矢ぁ…」




ぽた




僕の頬に水滴が落ちてきた。


「塔矢…辞めないで…」


進藤の涙だった。


「進藤…?」

「オマエが辞めちまったら…オレも辞める…」

「僕は辞めないよ……まだ」

「まだって何だよ?旦那次第で本当に辞めちまうのかよ?やだよ…オレ…絶対にやだ…」

「まだ先の話だから…」

「やだやだやだー!辞めるぐらいなら結婚なんてするな!」

「進藤…」

「ぅ……」


僕の上に体を預けてきた。

胸の上に下ろしてきた頭を、よしよしと撫でてやる。



「今のオレの彼女…さ、オマエにそっくりなんだ…」

「え…?」

「仕事一筋で…仕事のことしか考えてなくて…、実力は女医の中じゃずば抜けてる…」

「ふぅん…」

「好きなんだ…」

「そう…」

「オマエに似てるから…好きだった…」

「そう…」



ん?


僕に似てるから…?


「アイツ言ってた…。支えてくれる人と結婚したいって…、オレじゃあ忙し過ぎるからダメだって…。結婚までは考えられないって…」

「………」

「オマエも同じ?オレじゃダメ?」

「キミ次第…かな」

「オレ次第…?」


というか…なにこれ?

しれっと告白してる?

プロポーズされてる?


「じゃあオレ…頑張るよ。ライバルの位置を保ったまま…オマエも支えて…子育ても家事も全部頑張る。オマエに碁は辞めさせない」

「うん…それだと理想的だね」

「へへ…」



答えが出て安心したのか、進藤は落ち着いたみたいだった。

僕の胸の上でしばらくまどろんでいた。




と思ったら次の瞬間、ガバッと起きてきて―――



「進藤…?」

「よし!決まりだな!」

「え?」

「それでいこう!」

「は?」

「ほら、塔矢も起きろ。今からオマエん家いくぞ」

「…何しに?」

「決まってんだろ!先生と明子さんに結婚の挨拶をしにいくんだよ」




は?




「いや、待てよ。ワイン飲んじゃったな…。飲酒運転はやっぱマズイよぁ…」

「進藤…キミ、本気…?」

「ああ」

「僕のこと…好きなの?」

「好き」


好きって……


「彼女…は?」

「恋人の誕生日をドタキャンする女なんて知らねーよ。だいたいこれで何回目だっつーの!そんなに仕事が好きなら仕事と結婚しろよって感じだぜ!」

「…本当にいいの?」

「いいも何も…オレの心には元々オマエだけだし。アイツはオマエに似てたから好きだっただけで…」

「嘘…」

「嘘じゃありません!だいたい好きでもない女の誕生日なんか…覚えてるわけないだろ?」

「そういえばさっき…三ヶ月後って…」

「12月14日、だろ?その日に入籍しよっか♪」

「………」



どうやら進藤は本気らしい。

僕の気持ちは無視なの?って感じだけど………進藤ならいいかなって思う僕がいた。

さっきの理想的な旦那様になってくれるのなら…何も文句ない。



「…じゃあ、僕もキミの誕生日覚える」

「そうなんだよな〜オマエ、オレの誕生日知らなかったんだよな〜。ちょっとショックだったんだぜ?今日オマエが来た時、実はちょっと期待しちゃったのにさー」

「ごめん。でももう覚えたから」




9月20日は進藤の誕生日。


お誕生日おめでとう!







―END―












以上、24歳のヒカルの誕生日話でした〜。
本当は彼女の代わりにアキラと一晩を過ごしてもらうだけの話の予定だったんですが(そしてあわよくばそれで出来ちゃう〜みたいな)……あれ?
ヒカルが実はアキラさんのことが好きだったみたいで…気づいたらこんな展開に。あれれ?
ま、二人が幸せようなのでいいとしましょうかね(笑)

今年もアキラさんとラブラブでいてね、ヒカル君vv