●BEFORE&AFTER 9●
そうだ――進藤には責任を取ってもらおう
僕の初めてを何もかも奪ったんだし。
セックスっていうのは子供が出来るかもしれない行為だし。
あ、でもちゃんと避妊してくれてる…。
当たり前だけど嬉しい。
嬉しいけど恥ずかしい。
持ってるってことは……まさか最初から僕を抱くつもりでここに来たんだろうか……
……なんてことを考えながら僕は彼と一つになっていた。
「……ぁ…っ…―」
貫かれた痛みは時間が経てば慣れてくる。
代わりに僕を襲ってきたのは信じられないくらいの快楽。
彼が少し動くだけでビクッと反応してしまう。
「アキラ……」
この声、この呼び方が更に僕をおかしくさせる。
「すげ……気持ちいい…。オマエは…?痛くないか?」
「…ん、もう平気…。……ぁん…っ」
中を回されて、無意識に喘ぎ声が僕の口から出た。
それに気をよくした彼は更に出し入れを早めてくる――
「あっ…、や…っ、…ぁんっ…」
「…は、アキ…ラ」
「もう…っ、…だめ…ぇ…」
頭が真っ白になって―――
「ぁあ…っ…――」
ビクビクッと僕はのぼりつめてしまった。
「――…ん、…は…あ…」
その後すぐに進藤も達したらしく、激しく動いていた彼の動きが止まって…気持ちよさそうに息を吐いた。
「…ん――」
まだ繋がったままで落とされるキス。
何度も何度も惜しむように角度を変えて落としてくるキスに、僕の胸は彼の愛で溢れて裂けそうな気がした。
「―…は…ぁ…進…藤…」
「アキラ…」
「んっ…―」
ゆっくりと引き抜かれて下半身が解放される。
進藤が付けていたゴムを処理してるところを薄目で見ながら………眠りに落ちてしまった――
「塔矢、塔矢、起きろよ」
「ん……?」
目を覚ますと何やら明るくて、僕は進藤に裸のまま抱きしめられてることに驚いた。
「みっ、見るな!」
と慌てて離れて上布団に包まる。
「えーーと、取りあえずおはよう…塔矢」
「……おはよう」
「昨日のこと覚えてるよな?」
「……うん」
「よかった」
にっこり安心したように可愛く笑ってきた。
「…今、何時?」
「9時だけど?」
「いけないっ!」
慌てて起き上がって、床に落ちてたバスタオルを巻いてお風呂場に急いだ。
なぜか進藤もついてくる。
「なにそんなに急いでるんだよー?明子さん帰ってくるの夕方だろ?」
「奈瀬さんとの約束。あと一時間で新宿に行かなきゃ」
「行かないって約束だろ?」
「パーティーにはね。でも奈瀬さんに謝りに行かないと」
「電話でいいじゃん」
「番号知らないんだ」
「オレ知ってるけど…」
ピタッと体が止まった。
そういわれれば……そうだ。
「はい」
と既に発信ボタンを押した携帯を渡される。
『…はい?進藤?』
「あ……塔矢です」
『塔矢??やっだー、進藤の携帯からってことは上手くいったのね』
「は?上手く…?」
『告られたんでしょ?進藤に。というかこんな時間に一緒にいるってことは、もしかしてそのままHしちゃった?』
「え……」
何だか全てお見通しという感じで、僕の顔は真っ赤になってしまった。
「あ…あの、だから、今日は行けません。ごめんなさい」
『ああ、いいわよ別に。私も最初から行く気なかったし』
「え?」
『だってアンタ達、周りがイライラするぐらいマイペースなんだもん。でもちょっと発破かけたらすぐくっつきそうって、和谷達と話してたのよねー』
「……」
つまり……ハメられた?
『じゃあ結婚式には呼んでねー』
ツーツーと一方的に電話をきられた。
「アイツら…」
横で聞いていた進藤が余計なお世話!的に口を膨らませた。
「……で、塔矢」
「え?」
「昨日一応OKしてくれたけど、もう一度確認してもいいか?」
「なに?」
「ほら、オレを最初で最後の男に…とかいうやつ」
「ああ…」
「それってオレと結婚するってことだよな?」
「当然だろう?キミは僕の初めてを奪ったんだから、責任取って結婚するべきだ」
「塔矢…」
かなり嬉しかったらしく、進藤は僕をぎゅう…と抱きしめてきた。
「…今夜も来てもいい?」
「母がいるから打つだけなら構わないけど」
「明子さん説得出来たら泊まってもいい?」
「え??」
なんでそこまでして…と思ったが、進藤はどうしても三日続けて泊まりたいらしい。
で、三日目には結婚したいとか。
それってもしかしなくても明後日??
「式は無理でも入籍だけでもっ」
「そんな急に…。例え母が許しても父はまだ韓国だし…」
「じゃあオレ、明日韓国行って先生に許してもらってくる」
「無茶な…。そもそもなぜ三日三晩なんだ。千年以上前の婚姻方式は今では無理がある」
「それは分かってる。でもやれるだけやってみたい」
「………」
どうしても!と言う彼の押しに負けて、取りあえず母の許しを得てからだと納得して帰ってもらった。
夕方に帰宅した母。
夜に再び来た進藤。
「あら…まあまあ」
どうしましょうと突然のことに母は困っていたが、進藤が泊まることは許していた。
もちろん客間に布団は敷いてあげたけど、そんなところで彼が寝るはずもなかった。
「じゃ、行ってくる。夜には帰ってくるから」
翌朝――まるで会社に行ってくるから並に普通に出かける進藤。
まさか本当にこれから羽田に行ってソウルに行くなんて……
父も父だ。
いくら自分のお気に入りの棋士だからって、こうも簡単に娘をやるなんて!
更に翌朝――まさか本当に区役所でハンコを押すことになろうとは思ってもなかった。
「これで正式に夫婦だな♪」
「はは…」
もう笑うしか出来なかったが、嬉しそうに手を繋いでくる彼の手を、僕が握り返したのは言うまでもない―――
―END―
以上、短い婚活話でした〜。
というかこれじゃあ婚活とはいいませんね(笑)
本当はアキラさんに本当にパーティーに行ってもらうつもりだったんだけどなぁ…。
気が付いたら二人がいちゃいちゃしてて、全くそんな展開になりませんでした…あーあ(-_-;)
怒涛のスピード婚で、アキラは半分付いていけてませんが、これからゆっくり愛を育んで下さいってことで〜。