●SAVING TABOO 〜番外編C〜 ●
翌日――遅い朝食をとって部屋に戻る途中に、オレはとんでもない奴に遭遇する。
「ヒカル…?」
「…え?あ…あかり?!」
仲良く手を繋いでこんな時間にホテルにいることに、ふーん…とあかりは頷いてきた。
「おめでとう、ヒカル」
「え?」
「塔矢さんと婚約したんでしょ?週刊碁に書いてたよ」
「あ…うん。サンキュー…」
「久々に会ったけど、元気そうでよかった」
「お前も…な」
あかりは大学生とは思えないスーツ姿。
「就職…したのか?大学は?」
「今就活中だよ。今日これからここで説明会があるの」
「へぇ…頑張れよ」
「うん、ヒカルも本因坊戦頑張ってね」
「ああ」
先に5階で下りてしまったあかり。
次に彼女の姿を見るのはまたずいぶん先のこととなる。
オレとアキラが結婚して、息子も生まれて、娘も生まれた頃。
アイツの結婚式で、だ――
就職した法律事務所での社内結婚…らしい。
本当に幸せそうで、嬉しそうで、心からよかったと思った。
「人生って…不思議だな」
「え?」
結婚式から帰ってきたオレは、娘を抱っこしてあやしてるアキラを見て――そう呟いた。
「もし、オレがあの時…オマエの結婚を止めなかったら、オマエ、あの婚約者と結婚してただろ?」
「んー…そうかもね」
「んで、オマエは不妊に悩んでオレと浮気して家庭崩壊するんだ」
「なにそれ」
クスッと笑ってきたアキラとは裏腹に、オレは真顔で続ける。
「オレの方はオレの方で、オマエの結婚に絶望してあかりと結婚する」
「え…?」
「でも不妊に悩むオマエに協力して……結局は家族を捨てる、最低な夫になるんだ」
「どうして…そう言い切れる?」
「見てきたから」
「タイムマシーンでか?」
「ううん、夢で」
「夢?」
「うん…」
今となってはどっちが夢なのかもう分からない。
まだ長い夢を見てるのかもしれないし、もしかしたら22歳のあの前日、長い予知夢を見たのかもしれない。
でもどっちにしろ、今、アキラが横にいてくれるということは変わらない――
「好きだよ…アキラ」
「僕もだよ…。ずっと一緒にいてほしい…」
「うん…。二人でいい家庭を作ろうな――」
―――運命は二人の手の中に―――
――END――
以上、不倫話の補足番外編でした〜。
夢オチです、皆様(笑)
あれは全部夢だったのよーーー!!(言い切る)
と、まぁ…あのままのラストじゃあんまりだ…と、私自身も納得出来なかったので、何でもありのヒカ碁らしく、こんな続きにしちゃいました。
これで少しでも皆様のモヤモヤも消えると光栄です(笑)