●AVA●





「絶っっ対に嫌だっっ!!」



この日―――進藤の家に遊びに来ていた僕は、彼のその『注文』にNOをたたき付けた。



「一回ぐらいいいじゃん!だいたい韓国に勉強に行くって勝手に決めたのはオマエだぜ!?一ヶ月もオレに禁欲しろって言うんだから、このくらいいいじゃんっ」

「一ヶ月ぐらい開いた時なんて今までもあったじゃないかっ」

「絶対に出来ないって思ったらしたくなるのが男なんだよ!」


お互い顔を極限にまで近付けて睨みつけた。


「譲らないな…」

「ああ、こればっかりは譲れねー」

「キミは変態か?」

「普通だって。皆してるもん」

「嘘をつくな」


世の中のカップル皆がしてるなんて天地がひっくり返ってもありえない。

いいとこアダルトビデオとか、そういう類を見すぎて変な知識が入ったマンネリカップルぐらいだろう。


「どうしても嫌だっていうなら、浮気するからな」

「卑怯だぞ!」

「卑怯で結構。言っとくけど、オレってモテるんだぜ?浮気の一回や二回、しようと思えばいくらでも出来る」

「信じられない…。じゃあ勝手にすればいい。そのかわり、もうキミとは別れる」

「…え?ええ??待った!やっぱ今のナシ!」


僕らの言い争いはどちらかが折れないと絶対に終わらない。

今回は僕の勝ちだな。


「うー…頼むよ塔矢ぁ…。一回だけ…、誰にも見せないから…」

「………」


勝ったものの……この子犬のようなお願い視線を送られると、僕は怯んでしまう。


「オマエがいない間は一人で処理しなくちゃいけないだろ…?想像だけじゃ限界があるんだよ…」

「………」

「もちろんオマエが帰って来たらちゃんと捨てるし。いや、燃やす」

「………」

「な?いいだろ?一回だけ…」

「…………分かったよ。もう…」


しぶしぶOKすると、ヤッター!と進藤は両手を挙げて万歳した。


はぁ…。

僕って本当に進藤のお願いに弱いな…。


「じゃ、準備してくるからちょっと待ってて♪」



―――そう


進藤が今回僕に求めてきたのは、いわゆる『セックスビデオ』というやつだ。

エッチしてるところを映像化しておいて、僕がいない間はこれを見て乗り切りたいらしい。

全くもって信じられない。

理解出来ない。

プンプンッと怒りながら待っていると、5分もしないうちに進藤が帰ってきた。


「じゃーん!このビデオカメラで取るからな」

「…はいはい」

「この前アキバに行って買ってきた最新のやつなんだ。綺麗に撮ってやるからな」

「…はいはい」


しぶしぶ彼の後をついて寝室に入っていった。


「じゃ…脱いで?」

「………」


言われた通りにセーターとジーンズを脱ぎ…下着姿になった。


「下着も…」

「………」


……なんか想像していたのと違う。

これじゃあまるでカメラマンに言われた通りにポーズを取るグラビアアイドルだ。


「胸…揉んでみて?」

「僕が?」

「そ。自分で」

「………」


前言撤回。

これじゃあAV女優だ。


「…気持ちいい?」

「……別に」

「いつもあんなに胸で感じてたのに?」

「キミに触られてたからね…」


自分の手だと何も感じない……


「ふーん…じゃあ下半身も触ってみて」

「……」


指をそっとあててみた。


「濡れてる?」

「ん……少し」


気持ちが乗ってないとはいえ、やっぱりカメラに裸を撮られてることに羞恥を感じてるのだろうか。

少し濡れていた。


「脚…広げてよ。よく見たい」

「……」


ベッドに腰かけ、M字開脚並に脚を広げてみた。

近づけてくるカメラ。

こんなグロテスクな場所がどうして男の人は好きなのか、女の僕には理解出来ない。


「きれい…」

「…ぁ…」


彼の指がそっと触れてきて、溢れてる場所をなぞられた。

僕の感じる場所を知り尽くしてる彼だから、意地悪くそこを集中攻撃してくる。


「―ぁんっ…は…」

「もうぐちょぐちょだな…。舐めていい?」

「ん…」


舐めるには邪魔なのか、ビデオカメラを床に放ってエッチに集中し出した。

ちょっとホッとなる。


「…ぁっ、…や…っ」


舌を中に入れられたり指も一緒になって弄ってきたり、激しい愛撫に耐えられなくてベッドに身体を預けた。


「塔矢…オレのも」

「ん…」


彼の方も服を脱いで、僕の目の前にソレを出してきた。

手で扱いた後、そっと頬張る。


「すげ…気持ちいい。オマエずいぶん上手くなったよなぁ…」


誰のせいだ!と上目遣いに睨んだ。


「やばい…イきそう。も…いいよ塔矢」

「ん…」


口を離した途端に押し倒され、高まりを落ち着かせるようにぎゅっと抱きしめられた。

キスはしない。

性器を触りあった後の口って何か汚い気がするし。


「なぁ…中出ししていい?オレのが溢れてくるとこ撮ってみたい」

「変態。さっきからカメラほっぽってるくせによく言うよ」

「いいの。カメラはあれ一台じゃねーし」

「……え?」


へへっと彼が次々に移した視線をそのまま追うと、ベッドの真上にも上にも足元にも仕掛けてあって、色んなアングルで撮られてることに始めて気付いた。


「どうせやるなら徹底的にしないとな」

「ふざけ…」

「ふざけてねーよ!オマエ韓国行くんだろ?永夏なんかと浮気でもしてみろ、これバラまいてやるからな」

「はぁ?」


急に子供みたいに顔を膨らませてきた。


「心配なんだよ…永夏、オマエに結構マジだし…」

「彼は僕らが付き合ってることを知ってるよ?」

「だから余計心配なんだ!オレの大事なもん奪って、嘲笑うアイツの顔が目に浮かぶ」

「心配しすぎだ」

「絶対に気を緩めるなよ、許すなよ」

「ああ…分かってる」

「オマエはオレのもんだからな」

「ああ…キミも僕のものだ」


クスッと笑いあって、気持ちを確かめあって、僕らはセックスを再開した。

撮られてるのは相変わらず不満だけど、彼が単に楽しむ為に撮ってるわけじゃないって分かったから、ちょっと嫌ではなくなった。

せっかくだし、本当のAV女優みたいに大袈裟に喘いで演技してみようかな…なんて。


「…後で編集するんだろう?僕にも見せてね」

「なに…急に乗り気?」

「だってたいてい目をつむってるから、キミがどんな顔でイってるのとか、あんまり見たことないし」

「うわ、んなもん見なくていいよ。超恥ずかしい」


赤くなった彼の顔が可愛くて、たまにはこういうプレイもいいかなって思てしまった。


日本に帰ってきたら、二人で色々試してみる?







―END―






以上、セックスビデオ話でした〜。
題のAVAはAV女優の略です。
アキラさんという素晴らしい彼女がいるのにも関わらず、ヒカルはこっそりとAVを見てるのです。
もちろん勉強の為に。
もちろん好きな女優はオカッパのアキラ似の女の子。
で、ある日気づくのです。
どうせなら本物のアキラが出てるAVが見たい!(もちろん男役はオレ)
で、実践。
永夏のことなんか本当はどうでもいいのです。
なのでアキラが韓国から帰ってきてももちろん捨てません。
一生記念に大切にとっておくのです(笑)