●TIME LIMIT〜明人編〜 おまけ●





明人が彼女を連れてやって来た。

美鈴ちゃんを連れてやって来た。



えええぇ??!



「お…お前、いつの間に美鈴ちゃんを…!」

「い、いつだっていいじゃん!」


ただ驚くオレとは裏腹に、隣にいたアキラは

「よかったね、明人」

と何やら色々知ってるご様子。


「キミ…本当に気付いてなかったの?明人は昔から美鈴ちゃんのことが大好きだったじゃないか」

「ええー…そうだっけ?」


そりゃ、確かに今思えば明人は小さい時からよく美鈴ちゃんの後を追いかけてたけどさ。

まさかあの頃から好きなのか?!

未だに好きなのか?!

どんだけ一途なんだよ……

(て、オレが言える立場じゃないか。千明といい…皆オレに似過ぎだ)



「実は父さんと母さんに話があるんだけど…」

「ん?なんだ?美鈴ちゃん、妊娠でもしちゃったのか?」

「……なんでそういうことだけ鋭いんだよ」

「え…マジで?」


明人と美鈴ちゃんの顔は真っ赤になってしまっていた。

ちなみに今6週目らしい。

(来年の夏にはオレもついにおじいちゃんか…うーん…)


「安定期に入ったら式挙げようと思うんだ。入籍は美鈴ちゃんの親の了解をとったらすぐにでもするつもりだけど」

「そっか、頑張れよ」

「うん」



結婚の挨拶。

あれは人生で男が一番緊張する瞬間だ。

オレももう20年も前のことなのに、今でもよく覚えてる。

オレの時は千明を連れてたし、もう死ぬ思いだった。

でも緊張するのは男側だけで、女は結構呑気なもの。

美鈴ちゃんも

「これからおじさんとおばさんのこと、お義父さんお義母さんって呼んでもいいですか?きゃーー照れるっ!」

と一人騒いでいた。





一方、その翌日に千明から電話があった。


『あ、お父さん?私も結婚することにしたから。明日彼氏連れていくからよろしく』

「な…っ?!」



ツーツーツー



仕事が忙しい千明は用件だけ言うと、一方的に電話を切ってしまった。


けけけ結婚??!

かかか彼氏??!

駄目だ駄目だダメだー!!!

そんなの絶対にダメだー!!

千明はオレのものだ!!



「アキラ!千明が結婚するって!どうしよう!」

「……いいんじゃないか?千明ももう29だし、十分すぎるぐらい適齢期だ」

「嫌だよオレ!千明を他の男に取られるなんて!」

「心配しなくても、もうとっくの前に取られてるから。彼氏が出来た時点でね」


ガーン…

ガーンガーンガーン


「いいじゃないか、千明のウェディングドレス姿が見れるんだよ?キミも見たいだろう?」

「そりゃ…まぁ」

「綺麗だよ、きっと」

「…アキラの方が綺麗だよ、絶対」

「……ばか」


へへ〜っと、少し赤くなったアキラを抱きしめてみた。



とんとん拍子で決まった千明と明人の結婚。

嬉しいけど、どこか寂しい気分になるのは、きっとどこの親も同じだろう。

でも、例え結婚してもアキラが先生の娘であることが変わらないように、千明と明人がオレの大事な子供達であることは一生変わらない。

親として、ちゃんと祝ってやろうと思う。





―――おめでとう――







―END―







以上、明人編のおまけのヒカル視点でした〜。
明人君の結婚の挨拶も既に書いてますよね、挨拶編A参照で。
一ノ瀬君の結婚の挨拶はヒカル編参照で〜。