●ADULT●
「ハタチのお誕生日おめでとう、佐為君」
「…ありがとうございます」
数日前――僕は20回目の誕生日を迎え、ハタチになった。
今日緒方先生と対局だった僕は、終局後に先生の行きつけだという
成人年齢が18歳となった今でも、ハタチというのは特別だ。
それはもちろん、飲酒と喫煙が法的に許される歳となったからだ――
「1本どうだ?」
と緒方先生が僕にタバコを差し出してくる。
「…結構です」
「食わず嫌いはいかんぞ。進藤なんて喜んで貰ってたぞ」
もちろんすぐにゴホゴホ噎せてたがな、と昔話をされる。
先生が火まで付けて来たので、僕は仕方なくタバコに口付ける。
(マズ…)
即座に灰皿に潰した。
「後でいい店にも連れていってやろう。女の子と酒を飲むのも楽し
「間に合ってますので」
「まぁそう警戒するな。会員制だから外に漏れることもない。遊ぶ
「そうですか。ではお一人でどうぞ」
溜め息が出る。
この人は一体何がしたいんだろう。
僕の反応が見たいだけなのか。
本当に祝ってくれるつもりは絶対にないだろう。
「お持ち帰りも自由だし、何なら個室も用意されてるから店の中で
「それが娘の恋人に本当に勧める場所ですか?」
「佐為君は女はどうせ精菜しか知らんのだろう?」
「知ってた方がいいんですか?」
「プロに教わるのが上達への一番の近道だ」
「それで上手くなって本当に精菜が喜ぶとでも思ってるんですか?
緒方先生がククッと笑ってくる。
「本当に反応が父親そっくりだな。進藤も言っていたよ。それで本
「…そうですか」
先生オススメだというカクテルに口付ける。
(結構美味しいな…)
自分で言うのもなんだが僕は根が真面目なので、今まで一切アルコ
数ある式典の乾杯時も、僕に渡されていたのはいつも烏龍茶とかソ
でも、今後は違ってくるんだろう。
(ビールぐらいは飲めるようにならないとな…)
「早く精菜とも家で酒が飲めるようになりたいものだ」
「それは精菜がハタチってことですよね?」
「ああ」
「もう先生とは住んでないかもしれませんよ?」
先生のこめかみがピクっと反応した。
さっきの仕返しだ。
僕は精菜がハタチになったらプロポーズするつもりでいる。
家で精菜とお酒を楽しむのは先生じゃない、この僕だと目で訴える
「…やっぱり佐為君、この後キャバクラにでも行こうか」
「嫌ですよ」
「いいや、是が非でも連れて行く。精菜をまだ嫁にやるわけには行
「僕が遊ぶわけないでしょう?」
「いいや、行ってみると意外にお前もハマるかもしれんぞ。ほら、
「ちょ、離して下さい…っ――」
ようやく緒方先生を撒けて自宅マンションに帰って来た。
本当にキャバクラに連れて行かれるかと思った。
危ない危ない。
カギを開けて中に入ると、リビングに明かりが点いていた。
中で待っていたのはもちろん――
「あ、佐為。お帰りなさい。遅かったね」
「た、ただいま…精菜…、今日って来る日だった…?」
「予定が早まって時間できたから。ビックリさせようと思って来ち
「そ、そう…」
精菜が抱きついてきて早速キスしてくる。
「……ん…?」
「…どうかした?」
キスをすぐに解かれてしまった。
「佐為…、お酒飲んだ?」
「あ…、うん。カクテル2杯くらいだけど…」
「タバコ吸った?」
「一瞬だけだよ」
「まさか……変な店行ってないよね?」
「い、行ってないよ…(引っ張って行かれそうにはなったけど…)」
「本当に?」
「うん」
精菜がむう…、と疑いの目を向けてくる。
「正直に話して…」
「だから行ってないって。緒方先生に誘われたけどちゃんと断ったから」
「誘われたの?!お父さんに?!」
「う、うん…」
精菜の目付きが変わる。
「佐為はもう二度とお父さんと出かけないで!!本当ロクな事教え
精菜が直ぐ様緒方先生にクレームの電話をし出す。
いがみ合う声がしばらくの間続いていた。
「今度佐為をそんなところに連れて行こうとしたら、私もう家出す
怒り狂う恋人の様子を見て、僕は心底断ってよかったと思ったのだ
―END―
以上、ハタチになった佐為のお酒もろもろ解禁話でした〜。
まぁ緒方先生は面白がって色々教えようとしますよねw(ヒカルの時もそうだったみたいです 笑)
精菜は昔父親が朝帰りとかしょっちゅうで遊んでたことを知ってるので、もちろんそういうことをする男性が大嫌いです。
佐為は絶対しなさそうなので、精菜はもしかしたら無意識のうちに佐為を選んだのかもしれませんね。
でもまぁ精菜にああは言われましたが、今後も緒方先生とお酒くらいは
実はアキラ似でお酒がめちゃ強の佐為が、初めてアルコールを口に