●ABNORMAL LOVER 2●


「マヤがウザイの!圭はタスクのものなのに〜」

「マヤってヒロインだろ?きっと最終回では二人がくっついて終わりだぜ?」

「何か言った…?」

「ご、ごめん…」


本気で敵同士、男同士の二人が愛し合ってると思い込んでる彼女に一般の理論なんか通用しなかった。

最初は明らかにおかしいだろコイツ…と思いながらも、話を聞き続けてるうちにオレも洗脳されるかのようにそれが有りだと思ってしまったぐらい。

彼女が〆切に追われながら描いてるマンガも、その二人がラブラブいちゃいちゃしてる内容で、普通に原作通りの二人ではありえない内容だった。

明らかにおかしい…けど、彼女にはこう見えるらしい。

ちなみにこのカップリングがこのマンガの最大大手なのよ、一番多いのよ、と説明された暁にはどうしようかと思った。

つまり彼女と同じような見方をしてる奴が他にも大勢いるってことだろ?

急に無駄に日本の将来が心配になったり。

一体この日本の何パーセントがオタクなんだ?!

聖地はやっぱ秋葉原か?!

…と言うと、チッチッチッと彼女に訂正されたり。

「女オタの聖地は池袋なのよ!」

と―。

いつから袋はそんな街になったんだ…?





「ヒカルは絶対に受けよね!」

「はぁ??」

「あ、でも可愛い顔して実はヤる時はすごいんです!みたいなギャップも有りだから、攻めでもイケるかも〜」


おいおいおい。

仮にも自分の彼氏に何言ってんだコイツ!


「ヒカルのお友達の和谷君はー絶対に攻めよね!ヒカルと組ませたら和谷ヒカね☆きゃ、萌えるわ〜」

「げー。キモいこと言うな」


学生の時は芸能ジャンルだったとかいう彼女にとって、現実の男でそういうのを考えるのもお手の物らしく、次々にオレの知り合いで変な想像をしてくれた。

そしてついには――


「塔矢君はやっぱ攻めかな〜」

「ふ、ふぅん…」

「でも意外に天然なところがあるから、受けでも大丈夫かな?ていうかあの綺麗な顔はやっぱ受けね!うん!」

「……」

「ヒカルと組ませたら〜ヒカ塔?何か語呂悪ーい。やっぱヒカアキ?」


ヒカアキ…。

つまりオレが攻めで塔矢が受けってことか…?


「アキヒカでも面白いかも♪」

「何言ってんだよ!オレは受けなんか絶っ対に嫌だからな!」


つーか何熱くなってんだよ、オレ…。

高々いつもの彼女の妄想じゃん…。

でもその妄想を想像すると……――思わず発情しそうになってしまった。

慌てて頭を振ってその卑猥な想像を払う。

塔矢がオレの腕の中でオレに好き勝手されて、煽られて、足を開かされて、声をあげて、しまいには懇願する姿なんて………うわぁぁあっ!!!


…ちなみにオレは男同士のヤり方というものを知ってる。

知ってるというか…彼女のマンガから会得した。

彼女はギャグも描くが、壮絶なシリアスも描く両刀使いだ。

当然のように毎回エロいシーンが出てきて…中にはセックスシーンを描く為だけの話もある。

男同士のヤり方なんて男のオレでさえ知らなかったのに、何で女のお前がこんなに詳しく知ってんだよ!…と少々疑問になったが、とにかくオレはそれで色々と学ばせてもらったんだ。


「つーかお前さ、男のアレをこんなに生々しく描くなよ…」

「勝手に見ないでよ!」

「ごめん。でもさ…男同士のエッチってマジでこんななわけ?」

「想像よ想像。最低限の知識さえあれば、後はどれだけロマンティックにキャラを壊さない程度にイヤらしく描くか、だもん」

「ふーん…」

「男の人だって女同士の百合とか描いてるじゃない。それと同じよ」

「へぇ…」

女同士…か。

そんなのもあるんだな。

オレは今まで普通の男女のしか見たこともしたこともなかったから…何もかもが斬新な世界だ。


でも取りあえず彼女のマンガを読んで興奮したオレは、原稿途中の彼女をベッドまで引っ張っていき――押し倒した。


「もう!今週中に入稿しなきゃならないのに!」

「いいじゃん、どうせまたエロいやつ描くんだろ?その前に生身の男を自ら体験しておいた方が描きやすいかもよ?」

「私は男じゃないから全然参考にならないし」

「でも気持ちの面じゃ男も女も変わらねぇだろ?こういうことされたらこういう声が出るんだ〜とか頭にメモっといて原稿に生かせば?」

「もう下書き終わってるから遅いし…」

「んじゃ次の原稿用な♪」


何でもいいからさっさとヤろうぜ!…と思ってしまう時点で……オレは彼女を別に愛してないことを痛感する。

単なる捌け口?

でもそれはお互い様だと思う。

お前だって別にオレのことなんか特別好きってわけじゃねぇだろ?

デートより原稿優先なのがいい証拠。

本当に好きなら…もっとオレとの時間を作ってくれるはずだよな…?





「別れよう…」



その日の帰りにオレが口に出した言葉を、彼女はすんなり承諾してくれた。

それでも数日後、彼女のサークルのスタッフ長から文句の電話を受けたから…彼女が本当はショックを受けてたことを初めて知る。

もう少しで落とすところだった!…って。

何とかペン入れだけは自力でギリギリ終わらしたけど、残りは全てアシスタント任せのボロボロの状態だったらしい。


ごめんな…。

そして、ありがとう―。


お前と付き合って、本当に色々教えてもらった。

この期間を無駄にはしない。


今年のクリスマスは――塔矢を誘ってみようかな。


もちろんオレの気持ちを受け入れてもらえる確率は限り無くゼロに近いと思う。

でも伝えるだけ伝える。


『好きだ』

って―。


まさか

『僕も』

と即答されるとは思ってなかったけどな――















―END―















以上、女オタと付き合ったことで新たな世界を知ったヒカルの話でした〜。
ご、ごめんなさい!!(取りあえず謝っておきます…)
にしても本当に久々に書いたBLヒカアキがこんなのでいいのか??!
と思いましたが…書いてしまったので……(逃)

彼女に受けか攻めか評価されるヒカル…。
そんな会話に付いていけてるヒカルはやはりただものじゃないと思います(笑)
ちなみにヒカルの(元)彼女、かなりの大手サークル作家だと思われます。
彼女のイベントでの姿を見るためにビッグサイトとか覗いちゃうヒカルも書きたかった…(笑)
もちろん和谷を連れて。
でもたぶんヒカルは相手にされないと思う。
「そこのダンボール潰しといて」
とかこき使われてそう…。
売るのはスタッフに任せておいて、彼女はひたすらスケブ描きでしょうかね(笑)
にしても彼女のジャンルのあたりは思いっきり女性比率が高そうなので、ヒカル達は肩身が狭いだろうな〜なんて。
30分ぐらいでもう出たくなって、レストラン街で和谷とひたすら溜め息つけばいいよ、うん。
たぶん彼らに男性向けスペースに行く勇気はないでしょう…(笑)

本当はヒカ碁登場キャラの誰かを女オタにしたかったんですが、アキラ…は絶対に無理だし、奈瀬さんや桜野さんもねぇ…。うーん…。
またいい話を思いついたら、オタク話ももっと書きたいです。楽しいので!!><
読んでる方は…微妙かもしれませんが…。
すみません…。