●2nd FEMALE+β●


「佐為ー、迎えに来たよー」

「まぁ、アキラちゃん!どうしたのそのお腹!」

「え?伯母…さん?」


いつものように手合いの帰り、佐為を迎えに実家に行くと――珍しく伯母が来ていた。

そして僕のお腹をみて、目を丸くしながら近寄ってきたんだ。


「アキラちゃんまた妊娠してるの?この前佐為ちゃんを産んだばかりじゃないっ」

「はい…。でも出来てしまったので…」

伯母さんがほぅ…と溜め息をついた。

「…今何ヶ月目?9ヶ月ぐらい?それとも臨月に入ってるのかしら?」

「9ヶ月目です。5月の頭が予定日なので…」

「そう…。でもアキラちゃんまだ19でしょう?伯母さんそんなに早くからアキラちゃんに所帯染みて欲しくないわ。最近囲碁の方のお仕事も減らしてるらしいじゃない」

「……」


――そう

伯母さんは棋士としての僕をすごく応援してくれている。

そして正直な所…僕が家庭を持つのをあまりよく思ってないんだ。

「17で産んで19でも産んで、この調子じゃ一体20代では何人産むつもりなの?」

「……」


二人目でそんなに言われたくない…。


「まぁまぁお姉さん。アキラさんだってちゃんと考えてるわよ。ね、アキラさん?」

お母さんがコーヒーを持って居間に入って来た。

僕の前にはオレンジジュースを置いてくれる。

「でも棋士のお仕事は手合いだけじゃないでしょう?もう1年半近く他のお仕事してないらしいじゃない」

「それは…そうですけど、今は手合いだけで手一杯で…」

「それなのにまだ産むつもりなのね。信じられないわ。昔はあんなに囲碁一筋だったのに―」

「でもお姉さん、アキラさんだっていつまでも囲碁だけしてるわけにはいかないでしょう?私はアキラさんが立派な母親になっていってくれて嬉しいわ」

「母親なんて誰でもなれるじゃないっ!でも棋士は違うでしょう?こんなに才能があるのに、子育てで制圧してしまうのは勿体ないわ!」

「あら、必ずしも誰でもなれるわけじゃないわよ。今の時代ですもの、子供より仕事を取る女性が増えてるし」

「私としてはアキラちゃんにもそうなって欲しかったわ!それなのに17で結婚しちゃうし、早から二人目産むなんてことになってるし―。この調子じゃあ一体この先何人産むことやら…」


そんなの僕だって分からないよ…。

だけど…―


「…伯母さんには申し訳ないですが、僕は出来ただけ産むつもりです。大好きな人との子供は大切にしたいですし―」

「まぁアキラさん、立派だわ。少子化対策に貢献してるわね」

「明子、バカなこと言わないで」

「失礼ね、私は本気でアキラさんを尊敬してるのよ。私は一人しか産めなかったから―」

「今の時代一人で十分だわ!」

「あらどうして?アキラさんは金銭的に余裕があるんだからたくさん産むべきよ。だいたい3人も産んでるお姉さんにアキラさんのことをとやかく言う資格はないわ」

「3人産んだ私だから分かるのよ!たくさんいればいるほど子育ての負担は大きくなるの!とてもじゃないけど棋士なんて続けれないわよ」

「アキラさんなら大丈夫よ!ヒカルさんだって子育てに積極的だし、私も行洋さんも手伝ってるもの」


…母と伯母さんの言い争いはしばらく続いた…。

伯母さんの言いたいことは分かる。

棋士としての僕を応援してくれてるのもすごく嬉しい。

でも…それでも僕はヒカルと一緒に夫婦としてこの道を歩むことを選んだんだ。

彼の子供は出来るだけ産みたいと思うし…一緒に育てながら碁を高めあっていきたい…。

確かに子育てが棋士としての仕事に影響を与えることは避けれないけど、でもその代わり人として得るものがその代償の中にある。

だから僕はこの先どうなろうと…後悔なんてしないと思う―。


「あの…、帰って夕食の準備をしなくちゃならないので、そろそろ…」

「アキラちゃん!まだ話は終わってないわよ!」

「いいわよアキラさん、早く帰りなさい」

僕は伯母さんの方を見て、微笑みかけた―。

「伯母さん…心配してくれてありがとう。でも僕は…幸せだから、大丈夫だから―」

「…アキラちゃん…」


伯母さんなら分かるよね…?

実際に結婚して、3人も生み育てた伯母さんなら…。

大好きな人と家庭を持てる嬉しさや、その人の子供を産める喜びを―。


僕は今すごく幸せなんだよ…進藤―。

キミがいてくれるだけで―。

キミといるだけで―。



キミと出会ったあの時からね―。












―END―












以上、女3人の言い争いでしたー。
何が書きたかったのかというと……おばさん同士の価値観の違いです(笑)
伯母というオリキャラも交えて、アキラを上から見てもらいました。
うーん、確かに棋士としてのアキラを応援してくれる人にとっては、17歳でだなんて…ショックだったことでしょう…。まだまだこれからなのに!
でも明子ママはたぶん普通の女の子としてアキラを育てたかった!ような気がするので今のアキラに賛同。ヒカルに感謝(笑)
さーて、何人産むんでしょうねぇ…。(遠い目)


はい!では次はヒカル視点のちょい長編です!
後半はエロを含みますのでR15になります。ご注意下さい。









3rd FEMALE+β