●FEMALE+β 3●


「ご旅行ですか?」

「え?」

ケーキを一通り食べ終わって、コーヒーで一服してた時、隣の女の子のグループが話しかけてきた。


「んー、仕事ついでの旅行かな」

「へぇ、いいですね。香港にはよく来るんですか?」

「いや、2回目。アキラは3回目だっけ?」

「……」

不機嫌そうにコクンと頷いた。


やべーな…コイツって仕事以外じゃ関係ない奴には無愛想だから。

オレに話しかけてくる女の子には特にそうだ。

…あれ?

それって嫉妬してくれてるってことか?

何か嬉しいなソレ。

――って喜んでる場合じゃねー!


「私たち香港初めてで…、どこかオススメな所あります?」

「んー、オレもあんま観光はしてねぇから、ガイドブックの方が詳しいと思うよ」


適当に流す、あしらう、それがベストだ。


「この近くに泊まってるんですか?ランガム?」

「いや、半島…」

「えー、すごーい!リッチ〜」

「はは…」


やべェ…アキラがどんどん不機嫌になってる。

早く切り上げよう。


「私たち後であそこのアフタヌーンティー行こうって話してたんですよ」

「あぁ、オレらも3日前に行ったよ。結構並ぶから2時前に着いてた方がいいかもね」

「え?!もう1時半じゃん!もう行く?」

「行こ行こ」


そうそう、どっか行っちまえ!


「じゃあお先に〜」

「うん、またね」

軽く手を振って彼女らが出ていくのを見送った。

取りあえず一件落着。


「『またね』ってなに…?」

「へ?」

「また彼女らに会うつもりなのか?」

「何言って…ただの社交辞令じゃん」

「進藤の浮気者っ!!」


はい??!

アキラが勢いよく立ち上がって出口に向かい始めた。

何か知らねェけど、アイツがオレのことを『進藤』と呼ぶ時は危険信号なんだ。

さっさと謝って機嫌直してもらおう。

オレもアキラの後を追い、清算を済ませてカフェを後にした。


「なぁー、待ってよアキラ」

「……」

腕を掴むと立ち止まってくれた。

「誤解だって。さっきのはただの社交辞令。あんな奴らもう二度と会うこともねーよ」

「……」

「な、機嫌直して?」

後ろから抱きしめて、軽く髪と頬にキスをした。


「……僕」

「ん?」

「マタニティ・ブルーなのかも…」

「え…?」

「不安なんだ…」

「…子供をちゃんと産めるか?」

アキラが首を横に振った。

「僕に触れない間、キミが浮気しないか…」

「バカだな…。するわけねーじゃん」

「絶対…?」

「うん絶対。知ってるだろ?オレ、オマエがいないと対局散々になっちゃうんだぜ?そんな自分で自分の首しめるような真似しねーよ」

「……」

「それにこの子が産まれて落ち着いたら、またたっぷり触らせてもらうし。人間多少我慢した方が喜びが大きいしな」

「…そうだね」

「そん時は可愛がってやるからな」

そう言いながら首にキスをすると、アキラの顔が一気に赤く染まった―。

「それも困る…」

「なんで〜?」

「だってキミ…、やる時は容赦ないんだもん…」

「あれ〜?容赦しなくていいって1年前言わなかった?」

「それは…そうだけど…」

「冗談だよ。ちゃんと手加減するって」

「…うん」









「お、始まったぜ」

レストランでの食事を早めにすまし、オレらはシンフォニーのレーザーを部屋から見るために急いで戻って来た。

「綺麗だな」

「うん…。そういえば今回はヴィクトリア・パーク行かなかったな…。ここに来る時は毎回登ってたのに」

「また来ればいいじゃん。今度は子供達も一緒に…―」

「…そうだね―」



いつか…。


必ず―。














―END―













以上、名人戦という名の香港旅行でした〜(笑)
どこの国にしようかな〜と悩んだんですが、アジアと漠然には決めていたので、私も行ったことのある香港に。
もちろんホテルは誰もが一度は泊まってみたいと思うア・ソ・コ。
半島ホテルって…「半島」って…(笑)
自分でもどうなの?!って思いましたが、まぁ漢字ではこの表記ですので許して下さい。
そしてきっとお部屋はハーバービューのスイートかと思われます〜。
アキラが買ってきたチョコやクッキー。
高級品です。一粒200円ぐらいです。
興味のあるけど香港は遠い!という方は、日本橋の三越か、2007年7月に日比谷にオープンするこのホテルで直接買ってみてください〜。美味しいですよ〜vv
アーケード、ランドマーク、パシフィック・プレイスは共に有名ホテル隣接の高級ブティックの集まりです。
ギャレリアはおなじみの免税店。
そこの隣がランガムです。日本人も結構います。
そこより更に日本人が多いのが、ヒカアキ宿泊ホテルのロビー。
大人気のアフタヌーンティーを求めて毎日かなりの人が並んでます。
しかも予約はたとえ宿泊客でも出来ないので数十分待ちは当たり前。
正面エントランスから向かって右が喫煙席なんですが、こっちはまだ空いてるので、多少の煙は我慢出来る!という方は禁煙希望でも喫煙席に行ったほうが時間の無駄を省けるかと。
ちなみに食器はティファニー製(笑)
紅茶はお代わり自由ですが、お菓子もかなりの量なので軽食どころじゃない…かも?
でもアフタヌーンティーの味自体は、ここよりマンダリン・オリエンタルの方がオススメです(笑)
そしてシンフォーニー・オブ・ライツはホテルから丸見えかと。ムードたっぷり〜。
ヴィクトリア・パークからの夜景もオススメ〜。
個人的に香港はショッピングと夜景と中華の為の国だと思うので、観光は省きました〜。
ついでに名人戦もほとんど省きました〜。(おい)

ちなみにその名人戦。
実際の日程とは違います。
棋聖と名人のスケジュールが反対になってると思って下されば…。
他の対局は実際のとそれなりに一緒にしてるんですが、これだけはストーリー的に一緒に出来なかった……あぅ(=_=;)


はい!次はアキラ視点の小話です!
ではどうぞ〜。









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