●3rd FEMALE+α 2●


気がついたら…僕はまたベッドの上に寝かされていた。


「先生っ!アキラは?!妻は大丈夫なんですか?!」

「まぁまぁご主人、落ち着いて下さい」

隣りでヒカルが医者に食いかかっている。

「軽い貧血ですから、特に問題はないですよ。点滴が終わったら退院出来るでしょう」

「そうですか…」

ホッとしたヒカルは胸を撫で下ろした。

「少々お腹を絞め過ぎていたようですね。もうそろそろ服装も変えた方がいいでしょう」

「はぁ…」

「でもまぁ母子共に体に異常はありませんので、安心して下さい」

「母子?佐為にも何かあったんですか?」

「え?佐為とは?」

「子供の名前ですけど…」

「あぁ、もうお名前付けてらっしゃるんですか」

「え…?」

「心配しなくても今の所順調のようですよ」

「……」



あーあ


バレちゃった…



それではお大事に、と先生は病室を後にした。

見送ったヒカルが僕の方に勢いよく戻ってきたので、慌てて顔を背けた。


「アキラ…起きてる?」

「………うん」

「オマエ…妊娠してるのか…?」

「………うん」


諦めて返事をすると、ヒカルがシーツに手をかけた。

バサッといきなり足下まで剥される。

「何を…っ、…きゃっ」

仰向けにされて、手をお腹にあてて――擦り出した。


「オマエ…これ、何ヶ月…?」

大きさに唖然となっているみたいだ。


「…6ヶ月…」

「6?!」

ヒカルが大きな溜め息を吐いて、手を額にあてた。

「…オマエは…いつ初めて知ったんだ…?別居する前…?」

「…うん」

「だから……あんなに拒んだのか」

「…うん」

「言ってくれれば良かったのに…」


「…20日に…結婚記念日に…伝えるつもりだったんだ……だけど――」

泣きそうに答える僕の頬に、そっと手を差し延べてきた―。

「…ごめん。ごめんな…気付いてやれなくて―」

そう言われた瞬間、涙が溢れ出てきた…。


悪いのは僕なのに…。

ずっと言わなかった僕なのに―。


「佐為、元気にしてる…?」

「うん…」

「そっか…」


嬉しそうに穏やかに笑うキミの顔…。

キミって本当に子供が好きなんだね。

会わしてあげられなくてごめんね…。

だから…ちょっといいこと教えてあげる。


「この子ね…女の子なんだ」

「えっ?!マジ?!」

「うん―」

嬉しそうに反応した進藤を見て、笑ってしまった。

「キミって期待通りの反応をしてくれるね」

「あ…そうか?」

少し赤くなった進藤がおかしくて、ますます笑ってしまう。


「…あーあ、やっぱり意地張らずにさっさとキミに言えばよかった…。本当、つまらなかったよ…共感出来る人がいないのって―」

「オレももっと早くに知りたかった…」

「……」

進藤が僕の手を取ってじっと見つめてくる。


「アキラ…戻って来いよ」

「……」

「オレ…オマエのいない生活なんてもう嫌だ…。耐えられねぇ…」

「……」

「確かにオレ…言ってることもやってることも無茶苦茶だけどさ…、子供達には…父親だって必要だろ?」

引き寄せて、ぎゅっと抱き締めてきた。

「な?戻って来い…。一緒に育てようぜ…」

「……うん」





退院してすぐ、お父さんとお母さんに挨拶して、僕たちは自宅に戻ることにした。

二人共ホッとしたように見送ってくれた。

佐為は久々に見るパパの顔に少し困惑していたけど、一瞬で進藤は手懐けてしまった。

さすがというか何というか。




――その晩

異様なほどヒカルは抱き付いてきて、なかなかキスの雨をやめてくれなかった。

よっぽど寂しかったんだろうな…。


「…そういやオレさ、車の免許取ったんだぜ」

「本当?」

「オマエらが出ていってから、何にもすることがなかったから…。気を紛らわすのにもちょうど良かった…」

「ヒカル…」

「車買ったら三人でドライブ行こうな」

「うん…」

またそっとキスをして、その後ヒカルが僕の瞳をジッと見つめてきた。


「アキラ、約束して…」

「何を?」

「今度から子供が出来たって分かったらさ、すぐにオレに教えるって…隠さない、もったいつけないって」

「キミはまだ作る気なのか?」

微かに笑うと、ヒカルは少し頬を赤めて、ゆっくり話し出した。

「違う、オマエは二人もオレの子供を身籠もってくれた。もう十分…。だから今度からは作るとか作らないとかじゃなくて、出来たら…な。出来なかったらそれでもいい。でももし出来たら…絶対にすぐに教えて?」

「…うん」

そう言うと安心したように、また何度も何度もキスしてきた。


「…でさ、オレ計算したんだけど」

「え?」

「このお腹の子って…新婚旅行の時の、じゃねぇ?」

「…うん、…僕もそう思う」

「だよな〜、オレあの時頑張ったもん♪」

「……バカ」



――そう

僕達は去年の6月下旬、遅れながらの新婚旅行に行ったんだ。

その滞在中、ここぞとばかりにヒカルは連夜僕を抱きまくった。

そんな僕らの甘い旅行話はまた次の機会にでも。












―END―











以上、ヒカアキ夫婦物語・危機編でした〜。
なんとか最後はハッピー・エンドで(笑)

またしても出てきた社。
ものすごく出しやすいです、彼。
ただ彼が出てくると会話がヤバい内容に毎回なるので、うーん…て感じです(=_=;)
ちなみにヒカルが泊まったホテルは某Rホテルで(笑)
本当はミナミのホテルのつもりで書いてたんですが、関西棋院が梅田にあるのに難波のホテルは遠すぎだろ!と却下に。
まぁ話的にはどのホテルでもたいして問題ありませんが。あくまで私の心の中のイメージ。

ちなみにヒカルはものすごく子供好きだと思います。
自分の子も他人の子も、子供ならどんな子でも大好き!
子供向けのイベントにも進んで出ているかと。

さて、最後は微妙に新婚旅行の話が出てきましたが、またそのうち書きたいですねぇ…。
どこがいいかしら。
やっぱりあすこかしらvv
まぁそれは現地取材が終わり次第ということで。

はい!+αは少し暗めな話になっちゃったので、次は明るめの話で!
時期的には6月の拍手用小説@が先ですので、そちらを先に読んで下さるといいかと〜。
(この回が12月、拍手が1月、+βが2月ですので…)
ではどうぞ〜。








FEMALE+β