●2 NIGHTS 3 DAYS U 2●
修学旅行、2日目。
バスで奈良に移動して午前中は法隆寺を観光。
昼食後は奈良公園で解散して、各班ごとに東大寺や正倉院を見て回ることになった。
「進藤君、ちょっといい…?」
自由行動になると、少し移動する度に呼び止められ、告白された。
まるでチェックポイントのように待ち構えられていて。
さすがに10人を超えると僕もゲッソリしてきた。
一緒の班の人達ともとうとう逸れてしまい、僕はもう隠れるように公園内の休憩舎で休むことにした。
少し休んだら、遠藤の携帯にでも電話してみよう……そう思っていると、
「あれ?進藤君?」
と女子の声がしてビクッとなる。
恐る恐る振り返ると――同じクラスの別宮さんだった。
ちょっとだけホッとなる。
何故ならこの別宮さんは僕に全然興味のない女子だからだ。
少なくとも――異性としての僕には。
「他の班の人達は?」
「ちょっと…はぐれてしまって。別宮さんは?」
「うん、トイレに行ったら見事に迷った」
「そうなんだ…」
別宮さんが向かいのベンチに腰掛けてきた。
「進藤君、何か疲れてる?」
「ちょっとね…」
「あ、分かった〜。告白されまくって疲れたんでしょ?」
モテすぎるのも大変だよねーと笑ってくる。
僕も苦笑いするしかなかった。
「――ねぇ」
「え?」
「何で今年もプロ試験受けなかったの?」
「……」
「今って小学生でも何人も受かってるじゃん。進藤君も受けたらよかったのに」
「……そうだね」
別宮さんも碁を打つのはクラスの誰もが知ってる話で、棋力もなかなかのものだ。
彼女が打った棋譜を一度見たことがあるけど、院生試験もおそらく余裕で受かるレベルだと思う。
「まだ早い気がしてね…」
「そう?早いにこしたことないんじゃない?そういう世界でしょ?」
「そうだね……でも僕は一生棋士の世界で生きていくつもりだから。せめて小学生のうちは普通の小学生でいたい気がしてね…」
「……修学旅行で10人以上に告られるのが普通?」
「はは…」
「じゃ、来年は受けるんだね」
「――うん」
僕はそれは迷いなく答えた。
ずっとタイミングを見計らってきたけど、来年はいよいよ受けるつもりだ。
もうすぐ彩と精菜が院生になる。
ということは来年二人は確実にプロ試験を受けることになるだろう。
僕も一緒に受けて、一緒にスタートを切りたいと思う。
♪〜♪〜♪〜
携帯がなる。
確認すると、遠藤からだった。
「はい」
『進藤、今どこ?』
「あー…どこだろ。遠藤は今どこ?」
『南大門』
「じゃ、すぐ行くから待ってて」
『分かった』
ピッと切った後、僕は「別宮さんはどうする?僕は班の皆のところに戻るけど」と尋ねた。
「私も連れて行って!」と彼女は必死だった。
(実はかなりの方向音痴らしい)
「はい、精菜。お土産」
「ありがとう、佐為」
修学旅行から戻った翌日。
精菜がちょうど彩の部屋に遊びに来たので、お土産を渡した。
彩が飲み物を取りに行った隙に、精菜が
「ちゃんと断ってくれた?」
と確認してきた。
「もちろん」
「よかった」
「心配した?」
「ううん、佐為のこと信じてるから…」
彩が戻ってくる前に、僕らは一瞬だけ唇を合わせてキスをした――
―END―
以上、修学旅行話の続きでした〜。
10年以上1話だけ書いて放置してましたが、続きの2話目も書いてみました。
まさかの別宮さんの登場ですw
2日目時点で10人以上に告られて既に疲れきってる佐為ですが、3日目もまた告られ続け、結局20人からも告られる佐為だったりするのです〜。
モテモテすぎて大変だね!(笑)
ちなみに佐為の思い描く彩のお相手は「我が儘なアイツを広い心で寛容出来る人生経験豊富な大人の男性〜〜」だそうです。ふむふむ
1話目を書いた10年前はもちろん彩の相手は決まってなかったわけですが、2話目を書いた今ではもちろん決まってるわけですが。
どうですかね?彼は佐為の理想通りですかね?w ちょっと違うか?