●25th BIRTHDAY●
シーンと静まり返った寝室。
ベッドに横たわって、オレはぼーっと天井を眺めていた。
♪〜〜♪〜♪〜〜♪〜
さっきから度々鳴る携帯に反応して、また手を伸ばす。
さっきは和谷。
その次は伊角さん。
今度は――幼なじみのあかりからだった。
『ヒカル!お誕生日おめでとう!
頑張ってるみたいだね!
今度の名人戦の第三局も頑張って!』
はぁ…と溜め息をついたオレは、もちろん返事なんかせずに、すぐに携帯を元の場所に戻した。
皆よく人の誕生日なんか覚えてるよな…と感心しながら――
9月20日の今日は、オレの25回目の誕生日だった。
四捨五入するともう三十路。
おめでとうなんて言われても半分複雑な歳だ。
誕生日なんてどーでもいい。
……なんてのは、もちろん嘘だ。
強がってるだけ。
一番祝ってもらいたい恋人から、全然メールも電話も来ないから、拗ねてふて寝してるだけだ。
♪〜〜♪〜♪〜〜♪〜
再びなった携帯に手を伸ばす。
「…なんだ、本田さんか…」
見事に期待は裏切られ、また携帯を放った。
もちろん、明日にはその恋人に会える。
明日は名人戦の第三局の前夜祭だ。
オレも恋人も現地に向かう。
そう――今回の名人戦は、恋人である塔矢アキラ名人に、オレ、進藤ヒカルが挑んでるんだ。
どちらかが四勝するまでオレらはずっと敵同士。
この七番勝負が始まってからの三週間、アイツはオレに最低限の接触しかしなくなっていた。
何でこんな時期に生まれてしまったんだろう…と後悔する。
明日から現地入り。
きっと今の塔矢の頭には、第三局のことしかないだろう。
オレの誕生日のことなんてスッカリサッパリ忘れてしまってるだろう。
たとえ覚えていても、アイツは器用な女じゃない。
今日馴れ合っておいて、明日からまた敵に戻るなんて切り替えは出来ないと思うだろう。
ゆえに、触らぬ神に祟りなし。
今日オレへの接触は絶対に避けてくるはず…
でも!でもでもでも!
メールぐらいくれたっていいじゃんか!
恋人の誕生日に何もしないなんて酷いぜ!!
ピンポーン
「―――え…?」
耳を疑った。
慌てて玄関に向かい、そっと覗き穴から覗いた。
「塔矢っ!!!」
オレが勢いよくドアを開けたので、塔矢はちょっとビックリしていた。
「来てくれるとは思わなかった…」
「どうして?」
「だって…今名人戦の最中だし…」
「そうだね。僕も本当は少し迷った。でも…どうしても今日キミに直接会って、おめでとうって言いたかったから」
「塔矢ぁ〜〜っ」
嬉しくて嬉しくて、涙が出てきた。
ギュッと抱き寄せて…彼女の体を包み込む。
「誕生日おめでとう…進藤」
「ありがとう!」
でも、ついでにキスしようとしたら拒まれた。
「これ以上のことをすると明日からに響くから…」
「そ、そんなぁ…」
こんな感じで始まったオレの25歳。
また一年、塔矢と切磋琢磨して頑張りたいと思う。
―END―
以上、2011年度ヒカルのバースデー話でした〜。
短くてすみません><
ちょうど今リアルでも名人戦の真っ最中。
もしアキラとヒカルが戦っていたら…こんな感じかなと思います。
ラブラブ誕生日デートはしないかな〜と。
(ま、付き合い始めて初めての誕生日なら別ですが。この二人はもう何年も経ってそうなのでv)
25歳もアキラさんとラブラブしてね、ヒカル君vv